2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧
アメリカの美しい街ニューオーリンズのとある小さな広場には、1884年に建てられた彫像があります。 低い椅子に座り、寄り添う子どもを腕に抱いた女性の像。 ちっとも美人ではありません。無骨な靴をはき、質素なドレスの上に小さなショールをはおってい…
美は、見る人の心のなかにある。 アル・バーンスタイン 「まったく牛ってやつは、どうしてこういう寒い日にかぎって子牛を産むんだか」。 いらだち以上に不安の色が濃くにじむ、夫の低い声。私たちは家畜小屋へ急いでいた。 その雌牛は出産予定を一か月も過…
70歳のおじいちゃんは、ガンのためあっという間にこの世を去った。 お別れを言う機会がなかった10歳の孫娘、レイチェルは、何日も泣き暮らした。 だが彼女は、ある誕生日のパーティーで大きな赤い風船をもらい、あることを思いついた。 おじいちゃんに手…
子どもにとっての安心とは、 自分をしっかりと抱いてくれる父の腕である。 ーマリオン・C・ガレティー 五歳のとき、ぼくは重い病気にかかった。 両親は恐れおののき、医者たちは途方にくれた。ようやくつけられた病名は、髄膜炎だった。 当時は、この病気に…
自分の人生を見渡してみたとき、 最大の幸福は家庭における幸福である。 ジョイス・ブラザーズ博士 そのお皿は、買った当初から欠陥品だった。 だが、包装紙もレシートも捨ててしまったので、交換してもらうこともできなかった。 裏に突起があるせいで、ナイ…
「また出かけるの?一緒に行ってもいい?出かけないで。あたしと一緒におうちにいてよ」 10歳のわが子からの愛の言葉。上の子どもたちも、同じようなことを言ったものだ。 赤ちゃんのころは、私が彼らを置いて出かけようとすると大泣きした。もう少し大き…
われわれが子どもたちに末永く遺せるものは、二つしかない。ひとつはルーツ、もうひとつは羽ばたく翼である。 ホディング・カーター 私の父はささやかな事業を営んでいて、いつも15人くらいの人を雇っていました。 牛乳を瓶詰めする仕事と、自家製のアイス…
ぼくが子どものころ、いつもおばあちゃんにこう質問された。 「おまえのほしいものはなんだい?」 ぼくはそのときそのときで、年齢にふさわしい答えを言った。五歳のときは「キャンディ」、十二歳では「自転車」、十五歳では「くだらない質問には答えないよ…
大試合だった。屋根なしのスタンドは親や子どもで満員だ。野球場を照明が強烈に照らし、本物の大リーグのような雰囲気をかもし出していた。 ダグアウトの少年たちは、緊張し、興奮している。五回裏、うちのチームがリードしているものの、点差はわずか一点。…
何よりの勇気のあかしとなるのは、敗北しても落胆しないことである。 ロバート・グリーン・インガソル 昨夜は、八歳の息子が所属するサッカーチームの最後の試合だった。 ゲームの終盤、息子のチームが二対一でリードしていた。親たちがフィールドを取り囲み…
ある化粧品会社が、「あなたのまわりにいる最高に美しい女性を推薦してください」というキャンペーンを行った。 数週間のうちに、写真を添えた推薦状が何千通も届いた。 その中にとりわけ、従業員の注意を引いた一通があった。その手紙は、さっそくこの会社…
ある夜、ひとりの男が私たちのところにやって来て言いました。 「八人の子どもを抱えた家族がいるんですが、ここ数日ほとんど何も食べていません」 私は食べものを持って出かけました。その家に着くと、私はお腹を空かせた小さな子どもたちの顔をのぞき込み…
2人は、与えることによって恵みを受ける。 アッシジの聖フランチェスコ 私は四人の子どもを持つシングルマザー。ぎりぎりの給料で、何とか子どもたちを支えてきました。 でも、雨露をしのぐ屋根はありましたし、三度の食事にも着る物にも困ったことはありま…
私の友だちは恋しています。彼女は本気で言います。 「空ってこんなに青かったかしら」 「ガレージのわきのリラの花はあんなにきれいだったかしら。いままで何度もそばを通っていたのにね」 「モーツァルトを聞くと涙が出るのよ」 つまり、人生がいま花ざか…
あと二日で私はいよいよ三十歳になる。 もう三十代になるのかと思うと、私は憂鬱だった。幸せだった時代は、もう終わってしまったのかもしれない。 私は毎日、スポーツジムでひと汗流してから会社に行く。そのジムで、毎朝ニコラスに会う。ニコラスは七九歳…
空港に友人を出迎えに行ったときのことだ。 人はよく「人生観が180度変わるような体験」をしたというが、ぼくの場合、これがそれだったと思う。 友人をロビーで待っていると、一人の男が小さなカバンを両手に、こっちへ歩いてきた。男はぼくのとなりまで…
私は消防士として働いているが、この仕事をしていると落ち込むこともある。 誰かの家や職場が焼け落ちるのを見るのはつらいことだし、恐ろしい場面に出くわすことも多い。ときには、死の場面にすら直面しなくてはならなかった。 しかし、私が母ネコのスカー…
氷のように冷たい雨が降る中、おれは、いつものように居酒屋でひとり腰掛け、外の暗闇をじっと見つめていた。 ふと、居酒屋の向かいにある公園の水たまりにちょっとした塊があるのに気づいた。 それはみすぼらしい、腹を空かせた犬だった。 どうしてこんな雨…
希望とは、翼を持ち 人の魂に止まるもの そして、歌詞のない メロディーを歌い、 いつまでも歌いやまないもの エミリー・ディッキンスン ラブバード(訳注:つがいの仲のいい各種のインコ)。結婚したてのころ、私たちはこう呼ばれていました。 ダンと私は、こ…
エリックは、やせ細った子犬を見て、だいたい生後五週間くらいではないかと見当をつけた。その小さな犬は昨夜、家の門の前に捨てられていたのだ。 「聞かれる前に言っておくけど」とエリックは妻のジェフリーに言った。「答えはぜったいノーだ!うちでは飼わ…
私は愛犬のココアと、小さな町の高齢者向けの団地に住んでいます。 ココアは10歳のプードル犬で、私は69歳のおばあさんですから、ご覧のとおり、私たちはどちらも立派に高齢者と呼べるでしょう。 何年も前から、私は心に決めていました。退職したら、プ…
ネコは、欲しいものをねだったからといって何の害にもならないという原則に忠実に生きているように見える。 ージョセフ・ウッド・クルス 「フェンスの向こうに、子ネコが入った段ボールがまた捨ててありましたよ」と、いう知らせがあった。 私は心の中でうな…
大学生の頃、私は作家を目指して努力していた。私はすっかり言葉のプロ気取りで、他人の間違った言葉遣いにいちいち眉をひそめた。 とりわけ、赤ちゃんに赤ちゃん言葉で話しかける人たちを目のかたきにした。ペット相手にでれでれとしゃべる人たちには嫌悪感…
私は小学校の二年生になるまで、自分が貧しい家の子どもだということを知りませんでした。 一緒に遊べる9人のきょうだい、読む本、手作りのお人形といった具合に、必要なものは何でも揃っていたからです。 服はすべて母の手作りで、茶色の靴はぴかぴかに磨…
友人のダンと俺は、仕事の給料をもらい、週末をビーチで楽しむことした。大変な仕事の後だったので、何よりの休息となるはずだった。 最高にいい天気だった。俺たちは車の音楽のボリュームを上げた。 途中で車を止め、家に電話することにした。 母の日が近か…
ある若い母親は、ガンの治療のため長い入院生活を送りようやく家に戻ってきました。 彼女は、放射線治療のせいで髪が抜け落ちてしまったことをとても気にしていました。 キッチンの椅子に腰を降ろすと、小さな息子が物珍しそうにこちらを見ています。 彼女は…
失敗とは遅れであり、敗北ではない。それは一時的な回り道であり、行き止まりではない。 ウィリアム・アーサー・ウォード あるとても寒い日、家に帰ると横柄な文面のガス代の督促状が私を待っていました。 その上、三人の子どもたちまでが、えらくふさぎ込ん…
愛が豊かにあるところには、いつも奇跡がある。 ウィラ・キャサー これは、父が語ってくれたわが家の昔話である。 1949年に、父は戦争から戻ってきた。 ハイウェイでは、ヒッチハイクをして家に帰ろうとする、戦争から帰ってきた兵士たちの姿がいたると…
私が七歳のときのことです。私は、母が誰かに「明日は、三〇歳のお誕生日なの」と言っているのを聞きました。 とっさにふたつのことが頭に浮かびました。ひとつ目は、母にも誕生日があるなんて知らなかったということ、ふたつ目は母が誕生日プレゼントをもら…
ぼくが母のことを思い出すとき、まっ先に目に浮かぶのは、台所でいろんな材料を混ぜ合わせながら何やら強力な薬を作っていた姿だ。 母は読み書きはできなかったけれど、その頭の中には、昔から伝わる庶民の知恵がぎっしり詰まっていた。 母には、死の国から…