「 マザー・テレサのお話から」(読了時間:約2分)
ある夜、ひとりの男が私たちのところにやって来て言いました。
「八人の子どもを抱えた家族がいるんですが、ここ数日ほとんど何も食べていません」
私は食べものを持って出かけました。その家に着くと、私はお腹を空かせた小さな子どもたちの顔をのぞき込みました。
そこには悲しみや憂いの表情はありませんでした。ただ、ひたすら飢えの苦しみだけが見て取れます。
私は母親にお米を手渡しました。すると、彼女はそのお米をふたつに分け、片方を持って出て行ってしまいました。
彼女が戻ると、私はたずねました。「どこへ行っていたのですか?」
彼女の答えは単純明快でした。「お隣の家に行ってきました。――あの人たちもお腹を空かせていましたから」
私は彼女が分け与えたことに驚いたのではありません。だって、貧しい人たちはとても気前がいいものですから。
そうではなくて、私は、彼女が他人の飢えを知っていたことに驚いたのです。
人の常として、私たちは苦しんでいるとき、自分のことで精一杯で他人のことを構う余裕がないものなのです。
『こころのチキンスープ14』ダイヤモンド社
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