「シルバーエイジをともに」(読了時間:約5分)
私は愛犬のココアと、小さな町の高齢者向けの団地に住んでいます。
ココアは10歳のプードル犬で、私は69歳のおばあさんですから、ご覧のとおり、私たちはどちらも立派に高齢者と呼べるでしょう。
何年も前から、私は心に決めていました。退職したら、プードルを飼って、シルバーエイジ(老後)を一緒に過ごそうと。最初から、ココアはまれにみるほどお行儀がよく、お利口さんでした。
どんなことでも一回言えば、ちゃんとわかります。わが家に来て三日で家に慣れ、一度もいたずらをしませんでした。
それに、とびきり几帳面で、遊んだあとはおもちゃを必ず元の場所に戻すのです。私もかなりの几帳面なので、ココアは飼い主に似たのでしょうか。それとも、もともとそういうふうに生まれついたのでしょうか。
あの子は素晴らしい遊び相手で、私が投げたボールを口で拾って投げ返してくれます。
私が子どもの頃にお友だちとした遊びを一緒にやることもあります。
ココアが自分の手を私の手に載せ、私がもう一方の手を重ねると、あの子はさっきの手をまたその上に載せ、私も一番下の手をその上に重ねていくという繰り返しです。
それに、あの子はいろんなおかしなことをして私を笑わせてくれます。私が笑うと、あの子も嬉しがってもっと笑わせようとするのです。ココアと一緒に暮らすのは、本当に楽しくてたまりません。
もう二年も前ですが、ココアがとても奇妙なふるまいをしたことがありました。あれは奇跡だったのでしょうか、それともただの偶然の一致だったのでしょうか?
ある午後のことでした。床に座って一緒に遊んでいると、ココアが私の右胸に前足をかけて、そのあたりをくんくん嗅ぎ始めるではありませんか。
そんなことはそれまで一度もありませんでした。私は「ダメよ」と言いました。
でも、この日のココアはいつもと違っていました。ちょっとやめたと思ったら、いきなり部屋の反対側からすっ飛んできて、八キロの全体重をかけて私の右胸に飛びついたのです。
どーんとぶつかられ、私はあまりの痛さに悲鳴を上げました。単にぶつかっただけとは思えないほどの痛みだったのです。
それからまもなく、私はその場所にしこりを見つけました。レントゲンやその他の検査を受けた結果、乳ガンであることがわかりました。
ガンができ始めた頃、どういうわけかカルシウムの壁ができて、ガン細胞がその壁に張りついた形になっていたのです。
ココアが私に飛びついてきたとき、衝撃でその塊がカルシウムの壁から離れ、おかげでその塊に気づくことができたというわけです。それ以前には、しこりが手に触れたことはなかったので、乳ガンができているなどまったく知らなかったのです。
私は全乳房の切除手術を受けましたが、ガン細胞はどこにも転移していませんでした。お医者さまは、気づくのがあと六か月遅ければ、手遅れになっていただろうとおっしゃいました。
ココアはすべてを知ったうえで、ああいう行動をとったのでしょうか?もちろん、それは私にはわかりません。
でも、老後をこの素晴らしいチョコレートブラウンのプードルとともに過ごす決心をして本当によかったと思っています。
ココアと生活を共にするのが楽しいからというだけではありません。あの子は、私が長生きしてずっと一緒に暮らしていけるようにしてくれたのですから!
『こころのチキンスープ11』ダイヤモンド社
(子供用に一部改変)
Rebecca Schönbrodt-RühlによるPixabayからの画像