いい話を、子どもたちに!【いい話を集めたブログ】

いい話をたくさん子どたちに聞かせたいと思い、古今東西からいっぱい集めました。寝る前にスマホで読み聞かせできます。大人の気分転換にもどうぞ。

「人生でいちばんいい時」(読了時間:約3分)

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あと二日で私はいよいよ三十歳になる。

 

もう三十代になるのかと思うと、私は憂鬱だった。幸せだった時代は、もう終わってしまったのかもしれない。

 

私は毎日、スポーツジムでひと汗流してから会社に行く。そのジムで、毎朝ニコラスに会う。ニコラスは七九歳だが、鍛えた見事な体をしている。

 

その朝、いつもどおり「おはよう」と声をかけたのだが、彼は私がふだんのように元気でないのに気づいた。「具合でも悪いのかい?」

 

私は三〇歳代にさしかかって不安だと打ちあけた。私が彼くらいの年になったら、人生をどうふりかえるのだろうか。「ニコラス、人生でいちばんいい時っていつだった?」

 

彼は即座に答えた。「きみの哲学的な質問に対して哲学的に答えよう」

 

オーストリアで何ひとつ不自由のない子ども時代を送り、両親に守られていた。あのころが人生でいちばんいい時だった」

 

「学校にあがり、いまの自分を作った知識を学び始めた。あのころが人生でいちばんいい時だった。社会に出て就職し、一生懸命働いてお金をもらった。あのころが人生でいちばんいい時だった」

 

「いまの妻と出会い、恋に落ちた。あのころが人生でいちばんいい時だった。第二次世界大戦になり、私は生き延びるため妻とオーストリアから逃げた。北アメリカ行きの船の甲板で妻と無事を喜んだ。あの時が人生でいちばんいい時だった」

 

「カナダに行き、二人で新しい生活を始めた。あのころが人生でいちばんいい時だった。父親になり、子どもたちが成長するのを見守った。あのころが人生でいちばんいい時だった」

 

「そしていま、私は七九歳だが、病気もせず、元気で、結婚したころと同じように妻を愛している。いま、この時が人生でいちばんいい時さ」

 

『こころのチキンスープ12』ダイヤモンド社

(子供用に一部改変)

sarablatterによるPixabayからの画像