「髪の毛は違うけど」(読了時間:約2分)
ある若い母親は、ガンの治療のため長い入院生活を送りようやく家に戻ってきました。
彼女は、放射線治療のせいで髪が抜け落ちてしまったことをとても気にしていました。
キッチンの椅子に腰を降ろすと、小さな息子が物珍しそうにこちらを見ています。
彼女は、自分がこうなってしまったわけを話し始めました。きっと息子に訊かれると思って、何度も練習しておいたのです。
でも、男の子は構わずそばに寄ってきて、膝に上りました。頭を彼女の胸にくっつけ、そのままじっとしています。
彼女は言いました。「そのうち、髪が生えてくるわ。きっとすぐよ。そしたら、元通りになるわ」
男の子は膝の上で体を起こし、ちょっと考え込んだ顔をしてから言いました。
「髪の毛は違うけど、中身は前とおんなじだよ!」
彼女には、「そのうち」とか、「きっとすぐ」なんて言葉は必要なかったのです。今あるがままでよかったのです。
ロチェル・M・ペニングトン
『こころのチキンスープ10』ダイヤモンド社
(子供用に一部改変)