「最高に美しい女性」(読了時間:約3分)
ある化粧品会社が、「あなたのまわりにいる最高に美しい女性を推薦してください」というキャンペーンを行った。
数週間のうちに、写真を添えた推薦状が何千通も届いた。
その中にとりわけ、従業員の注意を引いた一通があった。その手紙は、さっそくこの会社の社長に回された。
手紙の主は、スラム街に住んでいるという少年だった。手紙の内容は、おおよそつぎのようなものだった。
ぼくの家から何軒か先に、美しい女性が住んでいます。ぼくは毎日会いに行っています。
彼女といると、ぼくは自分が世界一大切な子どもだという気がしてくるのです。
一緒にチェス盤でゲームをして遊びながら、彼女はぼくの悩みを聞いてくれます。
ぼくの話をわかってくれ、ぼくが帰るときは大声で「あんたはあたしの誇りだよ」と言ってくれるのです。
少年は、手紙をこうしめくくっている。
「この写真を見れば、彼女が最高に美しい女性だということがわかるでしょう。ぼくも、彼女と同じくらい美しい奥さんを持てたらいいなあと思っています」
文面に好奇心をそそられた社長は、この女性の写真を見たいと申し出た。秘書が差し出した写真には、車椅子に乗った、歯のない、かなり高齢の女性が写っていた。
薄くなった白髪は、ひっつめてひとつにまとめられ、その顔には深い皺が刻まれている。
だがどういう具合か、きらきらと輝く瞳がどんな欠点も忘れさせてしまっていた。
「この女性を採用するわけにはいかないな」と笑いながら社長が言った。
「美しくあるためには、わが社の化粧品など必要ないと証明してくれているようなものだからね」
『こころのチキンスープ14』ダイヤモンド社
(子供用に一部改変)