「いいぞ、マイキー!!」(読了時間:約3分)
何よりの勇気のあかしとなるのは、敗北しても落胆しないことである。
ロバート・グリーン・インガソル
昨夜は、八歳の息子が所属するサッカーチームの最後の試合だった。
ゲームの終盤、息子のチームが二対一でリードしていた。親たちがフィールドを取り囲み、盛んに声援を送る。
残り時間が10秒を切り、ボールは息子のチームメイト、マイキーという子の前に転がった。
「キックだ!」フィールドに響き渡る叫び声に、マイキーはぐっと足を引き、渾身の力をこめて蹴った。観衆は総立ちになった。マイキー選手、得点!
そのとき、あたりはしんと静まった。マイキーはみごとに点を入れたが、蹴りこんだのは味方チームのゴールだったのだ。
試合は同点となって終わった。しばらくのあいだ物音ひとつしなかった。
じつは、マイキーはダウン症で、彼にとってはまちがったゴールというものは存在しない。
どんなゴールであろうと、決めた選手はマイキーから喜びの抱擁をもって祝福される。
彼は、相手チームが得点したときも、その選手を抱きしめてしまうくらいだった。
やがて沈黙が破られた。マイキーが満面に喜びを浮かべて、私の息子をつかまえ、ぎゅっと抱きしめて叫んだのだ。
「点が入った!ぼくが入れたんだ!やったやった。みんな勝った!みんな勝った!」。
私は息子がどう反応するかと息を詰めた。
でも心配する必要はなかった。私は涙の奥から見つめていた――片手を高くかかげて、繰り返し賛美の声をあげる息子を。
「いいぞ、マイキー!すごいぞ、マイキー!」ほどなく、両チームの全員がマイキーを取り巻いて一緒に叫び、マイキーのゴールを祝福した。
その夜遅く、娘にどっちが勝ったのかと聞かれたとき、私は微笑んでこう答えた。
「同点だったのよ。みんな勝ったの」
『こころのチキンスープ16』ダイヤモンド社
(子供用に一部改変)