「分かち合いの木」(読了時間:約4分)
2人は、与えることによって恵みを受ける。
私は四人の子どもを持つシングルマザー。ぎりぎりの給料で、何とか子どもたちを支えてきました。
でも、雨露をしのぐ屋根はありましたし、三度の食事にも着る物にも困ったことはありません。子どもたちも、自分たちが貧乏だとは思っていなかったそうです。
あれはクリスマスのことでした。
プレゼントをあれこれ買うほどのお金はなかったのですが、人並みのことはしようと思っていました。
教会、家族、友だちと祝い、町に繰り出してクリスマスの飾りつけを見て、家のなかをツリーや星で飾りたい......。
でも子どもたちは、商店街へ行ってクリスマス・プレゼントを買うことを何よりも楽しみにしていました。当日になったら子どもたち同士で交換しあうのです。
何週間も前から子どもたちどうしで、あれこれと知恵を絞っては計画を練っていました。
もっとも、私にはこれが頭痛の種でした。だって、プレゼント用に貯めたお金はわずか120ドル。これを五人で分けるのですから。
いよいよ、買い物の日が来ました。私たちは早めに出発しました。
子どもたちには、それぞれ20ドル札を一枚ずつ渡し、4ドルくらいのプレゼントを五つ買うように言いました。
買い物の制限時間は二時間。それぞれのプレゼントを見つけたら、大きなサンタの前で集合です。
買い物が無事おわり、帰りの車のなかでは誰もが上機嫌でした。何を買ったか、ヒントを出しながら、みんな笑ったり、からかったり大騒ぎです。
でも、八歳になる末娘のジンジャーは、いつになく無口です。見ると、小さな袋を一つ持っているだけ。
透明なビニールの袋でしたから、中が見えます。なんと娘が買ったのはキャンディだけ!
私は腹が立って、「あげた20ドル札はどうしたの?」とどなりつけたいのをじっとこらえました。
家に着くと、私はさっそく自分の部屋に娘を呼びました。
ドアを閉めてから、「20ドル渡したのにキャンディしか買えなかったの?いったいどういうこと?」と尋ねました。
すると娘は、こう答えました。
「何を買おうかなって歩いてたら、教会に『分かち合いの木』が立ってたわ。見たらカードが下がっていたの」
「わたしは四歳の女の子です。クリスマスに着せ替えの服とヘアブラシのついたお人形がほしいです」って。
「だから、私、そのカードを木から外して、すぐにお人形を買いに行ったの。それから、そのお人形とカードを教会の人に渡したんだけど、もうお金なくなっちゃって......」
「だからキャンディしか買えなかったの。でも、いいよね、ママ。うちにはいろんな物あるもんね。その子には何にもないんだもの」
あんなに豊かな気持ちになれたのは、後にも先にもあの日が初めてでした。
『こころのチキンスープ12』ダイヤモンド社
(子供用に一部改変)