「ゴールは3・3・3」(読了時間:約5分)
ある日、カナダのある町が竜巻に襲われた。数十人の人々が亡くなり、被害額は何百万ドルにものぼった。
その夜、ボブは被災地で車を止め、被害のひどさを目の当たりにした。
彼はその時ある計画を思いついた。彼はラジオの放送局の重役をしていたので、その放送局を通して何らかの形で、被災者たちを援助できないかと考えたのだ。
その週の金曜日には、さっそく自分の考えを実行に移そうと会議を開いた。会議室のボードには、三という数字が三つ横に並べて大きく書かれていた。会議は、この数字の意味の説明から始まった。
「被災者を救済するために、募金を三百万ドル集めたいんだ。今から三日以内にその準備を整え、三時間でその金額を達成するなんて案はどう思うかね?」
会議室はシーンと静まりかえった。その沈黙を破って、誰かが口を開いた。「本気かい? そんなことできるわけがないじゃないか!」
ボブは言った。「いや、ちょっと待って。僕はできるとか、しなくちゃいけないとは言っていないよ。ただ、君たちがやってみたいかどうかを、聞いただけだよ」「もちろん、やってみたいよ」とみんなは声をそろえて言った。
そこでボブは、掲示板に書いた数字の下に、アルファベットのTを大きく書いた。
Tの右側に「なぜできないか?」、左側に「どうしたらできるか?」と書きこむと、さらに「なぜできないか?」と書いた上に大きくバツ印をつけた。彼の説明が始まった
「僕はね、右側の『なぜできないか?』なんてことを、とやかく議論する気は少しもないんだ。時間の浪費にすぎないからね
そこで、左側の「どうしたらできるか?」の下に、皆のアイデアをどんどん書きこんでいく。プロジェクトを実現させるための具体案がまとまるまでは、この部屋から出られないと覚悟してもらいたい」
部屋にはまた沈黙が流れた。しばらくして誰かが言った。「カナダ全域で、ラジオショーをやるっていうのはどうだろう?」「それはいい考えだ」とボブは言うと、さっそく掲示板に書き込んだ。
すると他の誰かが提案した。「有名人を司会者に使ったらどうかな?」
全国メジャーテレビの司会ならともかく、こんな地元の、しかもラジオに出演してくれるとは考えられなかった。
だが、この頃になると、素晴らしいアイデアが次々に出された。この会議が開かれたのは金曜日だったが、翌週の火曜日には待望のラジオマラソンが幕を切って落とされた。
カナダ全域にある五十のラジオ放送局が協力し、夢のイベントが実現したのだ。この素晴らしいアイデアが誰によって考え出されたかといったことは、一切問題ではなかった。重要なのは、被災者たちのために募金を集めることだった。
こうして、週末を除くとたった三日間の準備期間で、有名人の司会者を登場させるまでにこぎつけ、計画通り三時間で三百万ドルの募金を集めることができたのだ!
これでもうおわかりのことだろう。そう、できない理由を探し出すのではなく、どうやったらできるかを考え全力で取り組めば、どんなことでも可能になるのだ。
ボブ・プロクター
『こころのチキンスープ』ダイヤモンド社
(子供用に一部改変)
tommyzwartjesによるPixabayからの画像