「輝く明かりを」(読了時間:約4分)
誰かに太陽の光を届ける人は、自分自身もその光を浴びずにはいない。
ジェームズ・M・バリ
もう三十年以上も前のこと、ぼくは大きな高校に通う二年生だった。生徒数は二百人、そこはまさしく人種のるつぼだった。学校は荒れていた。
ナイフ、鉄パイプ、チェーン、喧嘩のときに拳にはめるブラスナックル、ときには手製ピストルまで飛び出しても驚かなかったくらいだ。暴力沙汰は日常茶飯事だった。
ある日、フットボールの試合を観戦したあと、ぼくはガールフレンドと一緒に球技場を出た。人通りの多い道を歩いていると、後ろから誰かに蹴られた。
振り向くと、ブラスナックルをはめた地元の不良だった。いきなりくらった一発で鼻の骨が折れた。
十五人くらいに取り囲まれ、あらゆる方向から拳骨が飛んでくる。骨折、脳震盪、そして内臓出血。
ぼくは手術室に運ばれ、「もし、もう一回頭を殴られていたら、助からなかっただろう」と医師に言われたほどの重傷を負った。幸い、彼らはガールフレンドには手を出さなかった。
回復したぼくのところへ、友だちがやってきて言った。「あいつらに落とし前をつけてやろうぜ!」
それが、「問題解決」の方法だった。やられたらやり返す、それがいちばんだ。ぼく自身のなかにも、「そうだ!仕返しだ!」と叫ぶ声があった。復讐したい気持ちは確かにあった。
だが、「いや、それではいけない」という声も、ぼくのなかにあった。
復讐は問題の解決にはならない。それはますます闘いをエスカレートさせるだけであることを、歴史は何度も何度も証明している。別の方法を見つけ、悪循環を断ち切るべきなのだ。
ぼくたちはさまざまな人種グループと相談し、「ブラザーフッド・コミュニティ」という名のグループをつくった。
明るい未来を築きたいと願っている仲間がこんなに多いことを知って、ぼくは驚いた。だが、一部の生徒や教師、親たちはこうした交流にあくまで反対した。
だが、こんな状態を何とか変えよう、違うやり方をしようとする人たちの数は増えていった。
二年後、ぼくは生徒会長に立候補した。ふたりの対抗馬のうちのひとりはフットボールのスター、もうひとりは人気ナンバーワンの生徒だった。
しかし、三千二百人の生徒のほとんどは、新しい流れを作ろうというぼくに協力してくれた。
すべての人種問題が解決したというつもりはない。
だが、異なる人種グループと話し合い、つきあう方法を学び、暴力に訴えずに違いを解決し、最も厳しい状況でどう信頼を築くかという面で、大きな進歩を遂げたのはたしかだった。
人間どうしが本気で話し合うとき、驚くほどのことが起きる!
何十年も前のあの事件は、ぼくにとって最悪の出来事のひとつだった。だが、憎悪ではなく愛で応えることを学べたことが、人生を生きてゆく大きな力となった。
みんなの明かりが暗いときこそ、たったひとりでも思い切って輝く明かりを掲げれば、世の中に変化を起こすきっかけになるのだ。
エリック・アレンボー
『こころのチキンスープ9』 ダイヤモンド社
(子供用に一部改変)
RÜŞTÜ BOZKUŞによるPixabayからの画像