「袋詰め係のチャック」(読了時間:約3分)
地上には、天が満ちている。
エリザベス・バレット・ブラウニング
私は、スーパーマーケットでの買い物が大嫌い。
とくに店がごった返すクリスマスの頃には、さっさと商品をカートに入れて、ベテランのレジ打ちの列にしか並ばないの。あのとんでもない人混みから一刻も早く抜け出すため。
もちろん、クリスマスは大好きよ。嫌いなのはスーパーでの買い物!
だからこの前、ぎっしり詰め込まれたカートが十台も並んでいる「間違った列」についてしまったとき、私がどれほどうんざりしたかわかるでしょう?
他の列はちゃんと前に進んでいるっていうのに、こっちの列はちっとも動かないんですもの。列のあちこちから、「どうかしたのかね?」「いつまで待たせるのよ?」と言う声が聞こえてきたわ。
レジのそばまで行って確かめると、犯人は袋詰め係のチャックだった。
彼ったら、ひとつひとつの商品にいちいち話しかけながら、ていねいに袋詰めをしているんですもの。
「あっ、ケーキミックス君。クリスマスに、誰かいい人のデザートになるんだね」とか、「やあ、シリアル君、君を食べれば、男の子も女の子もどんどん大きくなるよ」とか。
商品の袋詰めが終わって、紙袋を渡すときには、今度はお客に向かって言っている。
「お客さんは家族の皆さんに愛されているでしょ。だって本当によく面倒を見ているもの。よいクリスマスを!」
私がどうしたと思う?
黙って自分の番を待ったなんてもんじゃないのよ。車のところまで買い物袋を運んでくれたチャックに、何と二ドルのチップまであげたわ。
彼ったら、そのニドルのお札と私の顔を交互に見比べると、急に顔を輝かせて、思いっきり飛び跳ねた。
そして、大声で叫んだわ。「見てくれ、見てくれよ!おれは、二ドルもチップをもらえる人間なんだぞ!」って。
それから、踊りながら店に戻っていった。つぎにそのスーパーに行ったとき、その日のことを見ていた店員さんがこう言ったの。
「チャックにチップをやってくださって、ありがとうございます。あの子がいい子だってこと、私たちはわかってるんですけど、大切なのは、チャック自身がそのことを知ることですから」
私はこう答えたわ。「とんでもない、お礼を言うのはこっちの方だわ。だって、彼のおかげで、あんなに優しい気持ちになれたんですもの。何と言ってもクリスマスですものね。とてもお金では買えないレッスンだわ」
(子供用に一部改変)
ペティー・パーカー
『こころのチキンスープ8』ダイヤモンド社
Alexas_FotosによるPixabayからの画像