「三つ子の魂百まで」(読了時間:約1分)
大学で教鞭をとる先生は、教育の研究調査のために世界各地を訪ねます。
アメリカのフィラデルフィアの郊外にある町では、子どもが三歳になると「私は三歳になりました」と言って、近所の人達に挨拶して回る風習があったといいます。
その子ども達が訪ねてくると、近所の人達は「おめでとう」と祝福し、子どもが手に持っている帽子に小銭をプレゼントします。
帽子に小銭がいっぱいになると、その子どもは兄や姉に手を引かれ、社会福祉関係の施設を訪れ、そのお金を寄付するのです。
その町では、子どもが三歳になると市民としての生き方の基本を身につける準備をしているのです。
ニューヨークのある家庭に泊まった時のことです。その家にはメアリーという三歳の女の子とボブという小学校一年生の男の子がいました。
そのボブが「本が読めるようになった」と嬉しそうに言うので先生が「ぜひ読んで聞かせてほしい」と頼みました。
するとボブは童話の本を持ってきて大きな声で読み始めました。
そこへお母さんがやってきて、「せっかく日本からのお客さんに本を読んであげるのなら、その声を録音しましょう」と言ってボブの前にテープ・レコーダーを置きました。ボブはますます張りきって読んでくれました。
先生は「何のために録音するのか」と思ったそうですが、ボブが読み終わると、お母さんがメアリーに言いました。
「今度の日曜日に私と一緒にダウンタウンに買物に行きましょう」
「その時ボブが吹き込んだ録音テープを目の不自由な方々の福祉施設に寄付しましょう。寄付するのはメアリーの役目ですよ」
家庭が社会に直結しているのです。
『児童生徒に聞かせたい名言1分話』 柴山一郎著 学陽書房