「本当の親切」(読了時間:約1分)
S先生は小学二年生の担任で、クラスは一年生の持ち上がりです。
クラスにA君という脳腫瘍の手術をした子がいて一年生の時はクラスの子達がよく助けてくれました。
運動会や遠足などの行事の時もまずどう助けたらA君が楽しく参加できるかを話し合ったものです。
A君は皆の援助で一日も休みませんでした。
二年生になった最初の時間、S先生は言いました。
「二年生になったら違ったことをしましょう」と。
子ども達は何だろうと眼を輝かせました。「A君が自分で出来ることは自分でやってもらいましよう」
すると子ども達は反対しました。
「廊下を歩いてつまずくかもしれません」
「給食のスープを運ぶ時こぼすかもしれません」
「隣の子にいじめられるかもしれません」
S先生は静かに話し始めました。
「本当の親切とはどんなことをいうのでしょう。A君を助けて、A君をいつまでたっても一人で何も出来ない子のままにすることが本当の親切でしょうか」
「A君も自分で出来ることは自分でしたい、と言っています」
子ども達は眼を丸くして聞いています。
「A君に何もさせないことがA君を大事にすることでしょうか」
あるクラスメイトが立ち上がり、「A君が出来ることはやってもらいます」と言うと、他の子が、「A君が出来るか出来ないかは誰がきめるんですか」と言います。
すると誰かが「A君がきめたらいいです」と言うと全員が「そうでーす」と言いました。
S先生は、「よくわかったね。先生は嬉しいですよ」とほめました。
『児童生徒に聞かせたい名言1分話』 柴山一郎著 学陽書房