「十一番目の箱」(読了時間:約3分)
受けるよりは、与える方が幸いである。
聖書『使徒言行録』二十章三五節
感謝祭がくるたびに、私はあの日のことを思い出します。
その年、私の教会では、感謝祭に食料品を配るため10の恵まれない家庭を選び出しました。地元の商店がハムを寄付してくれ、食糧銀行※からもいろいろな品物を買いました。
感謝祭の前日、私たちが教会で段ボール箱に食料を詰めているところへ、知らせを受けた家族たちが嬉しそうにやってきました。それは、何か月分もの上等な食料品でした。
ところが、それぞれの家族がどの箱にしようかと選んでいるとき、思いがけないことが起きました。そこへ、三人の子どもを連れた夫婦が入ってきたのです。
彼らは引っ越してきたばかりだったので、私たちのリストには載っていませんでした。けれども、教会で食料品を配ることを聞きつけてやってきたのです。
私は彼らに、この食料品の行き先はすべて決まってしまっているけれど、他にできるかぎりのことをしましょうと話しました。
そのときです。10の家庭のうちの一人の女性が、運んでいた段ボール箱を何も言わずに床に降ろし、急いでどこかから空の段ボール箱を探してきました。
そして、自分の箱から、分けてあげられるものをその空箱に移し始めたのです。やがて、他の家族たちも彼女にならいました。
こうして貧しい人々は、またたく間にもうひとつの家族のために、十一番目の箱を作ってしまったのでした。
(子供用に一部改変)
※食糧銀行=寄付された食料を貯蔵し、公共機関の援助が受けられない困窮者に分配する地方センター。
ビル・シンプソン牧師ミシェル・ボーウェン寄稿
『こころのチキンスープ8』ダイヤモンド社
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