ぐず太郎さんの話「何でも三回やろう」 (読了時間:約1分)
ある会社に「ぐず」と呼ばれる人がいました。太郎という名前なので「ぐず太郎」と呼ばれていました。
本を読んだこともなく、何事をするにもてきぱきできず、皆から「ぐず」「ぐず」とからかわれていました。
ところが、何かのひょうしに、本多光太郎博士の本を読んだのです。その本にはこんなことが書かれていました。
「鋼の世界的権威者、本多光太郎博士は愛知県の農家の三男坊、小さい時あまりパッとせず、鼻たらしの光ちゃんと言われました」
「小学校の先生にも『お前はわかりが遅いから人が一回やるところを三回やれ』と言われました」
「大学生のお兄さんに『カルタゴ興亡史』という歴史の本を借りた時、お兄さんは二、三日で返しにくると思っていたところ三週間後に持ってきたので『どうだ、わかったか』と聞いたら、『三回読んだらやっとわかった』と答えたそうです」
「このようにわかりの遅い光太郎少年が、後年世界的な大学者になろうとは誰もが夢にも思いませんでした」
「光太郎少年は、伸びない、さびない特殊鋼を発明して『鉄の神様』といわれたのです」
この本を読んで「ぐず太郎」さんは、「よし、自分もこれからは何でも三回やろう」と決心しました。
夜の時間は本を読むことに決め、初めは雑誌から読みだし、だんだんと難しい本を読むようになりました。
光太郎少年のように三回ずつ読むのですから、よくわかります。
一年たち、三年たちました。するとどうでしょう。
「ぐず太郎」さんは誰よりも物知りとなり、わからない時は「ぐず太郎」さんに聞くようになり、やがて「物知り太郎」さんといわれるようになりました。
『児童生徒に聞かせたい名言1分話』 柴山一郎著 学陽書房