ちょっといい話~大人用~「笑うことの大切」(読了時間:約4分)
千葉大名誉教授、多胡輝氏の心に響く言葉より…
ある集まりで、まもなく百歳を迎えるというのに矍鑠(かくしゃく)として、
とくに頭の柔軟さは、一回りも二回りも若い私たちも
敵(かな)わないという大先輩に、その秘訣を尋ねました。
するとその大先輩は、
「やはりボケないためには、教養と教育がなくちゃいけない」
と言います。
この答えを聞いて、私は正直言って意外だったので、こう反論しました。
「でも大先輩、お言葉を返すようですが、けっこういい大学を出て、
本もたくさん読み、教養も教育も十分あったはずの人が、
ボケちゃったという話をよく聞きますよ」
するとその大先輩はこう言ったのです。
「ダメだなあ、君たちは。そんなことだから早くボケるんだよ。
あのね、キョウヨウっていうのはね、教養じゃなくて、今日、
用があること、キョウイクとは教育ではなく、今日行くところがあるってことなんだよ。
キミらもね、今日用事がない、今日行くところがない、となったらボケるしかないんだよ」
これには、居並ぶそうそうたるメンバーも、完全に一本取られ、その場は大爆笑の渦に包まれました。
たしかに、これほどボケないための頭の使い方を、巧みに表現した言葉はめったにないでしょう。
しかし、私は、その言葉の意味合いもさることながら、
彼のこの「人を食った表現のしかた、笑いの渦に人を巻き込むその頭の使い方」
こそが、若々しい頭脳の秘密ではないかと思ったのです。
長寿者といえば、あの百七歳と百八歳まで生きた双子の姉妹、
きんさんぎんさんの周囲にも、いつも笑いが絶えませんでした。
一番有名なのは、人気者になって出演料などがはいるようになったとき、
「お金を何に使いますか」と聞かれ、二人揃って「老後の蓄えにします」と答えていたことです。
そして、この愛すべき百歳姉妹が、
いろいろなところでその長寿の秘密を聞かれたときの「金さん銀さん語録」
として伝わっているもののうち、最初の二つが「笑い」に関するものだったのです。
全部で十四ヵ条ありますが、そのうちのいくつか紹介させていただきます。
①よくしゃべり、よく笑うこと。これも長生きの秘訣だと思うにゃ。
②笑う門には福来る、そういうじゃろ。犬や猿は笑わん。
③感謝を忘れたら、人間はだめになる。ああ、有難や、有難や。
④悲しいことは、考えんほうがええ。楽しいことを夢みることだよ。
⑤人間、大事なのは気力。自分から何かをする意欲を持つことだね。
こうして見ると、きんさんぎんさんにしても、
やはり生来の明るさ活発さという性格的なもの以上に、
日ごろの「笑い」を大切にする生き方が、これだけの長寿、
とくに頭の長寿を保てた重要な理由の一つだったと思うのです。
・・・・・・・・・・・・・
『100歳になっても脳を元気に動かす習慣術』日文新書
池田龍三氏「ちょっといい話」より