「夕焼けに浮かぶシルエット」(読了時間:約3分)
成功とは、心のあり方である。
ジョイス兄弟
二、三年前にサイクリングを始めた頃、私は気が向いたときに近所を走れればいいという程度にしか考えていなかった。
ところが、しだいに力がつき始めると、仲間たちからもっと練習して長距離を走ってみたらどうかと勧められた。
最初にやってきたチャンスは、病気の人たちを支援するための募金活動として、240キロを走る大会である。
参加を申し込んだときは、とても素晴らしいアイデアに思えた。何といっても、意義ある目的のためなのだから。私は、やる気満々で練習に励んだ。
しかしその日が近づくにつれ、本当にできるだろうかという不安が強くなっていった。
私は募金集めには参加したいと思いながらも、二日間も自転車をこぎ続ける気にはなれなかった。
私たちは、美しい日曜日の朝、静かな田舎町をスタートした。最初の数時間は、素晴らしい気分で走った。何もかもが、想像していたとおりだった。心は浮き浮きとはずんだ。
ところが一日が終わる頃になると、私は疲れ、苛立ってきた。
心が弱音を吐くたびに、すぐさまそれが体に伝わった。
「もうだめだ」と思えば足にけいれんが走り、「みんな私より力が上だわ」と思えば息が苦しくなってきた。もうこれ以上走れそうになかった。
坂を登りきったとき、目の前に夕焼けが広がった。その美しさにひかれてもう少し走っていくと、真っ赤な太陽を背にした女性走者のシルエットが遠くの方に浮かび上がって見えた。一人で、ゆっくりとペダルをこいでいる。
その姿はどこかが違っているように感じたが、なぜかはわからなかった。私は自分を駆り立て、彼女を追いかけた。
近づいてみると、その女性はゆっくりと、だが確実にペダルを踏み、その顔にはかすかなほほえみが浮かんでいた。きっぱりとした決意が感じられるほほえみだった。
そして彼女には、足が一本しかなかった。
その瞬間、私の関心がひとつのものから別のものへと移った。丸一日、私は自分の身体的な限界ばかりを気にかけてきた。だが今、自分をゴールへと導いてくれるのは、「身体」ではなく「意志」だということがわかったのである。
二日目は終日雨だった。二度とあの女性を見かけることはなかったが、私はひたすらペダルをこぎ続けた。あの女性が、この集団のどこかで黙々とペダルをこいでいることを知っていたから。
その日が終わる頃、私は240キロを完走した。まだまだ走れそうな気がした。
キャシー・ヒギンズ
『こころのチキンスープ8』ダイヤモンド社
(子供用に一部改変)