「泣いてもいいよ」(読了時間:約4分)
誰かと親友になるには、たくさんの理解と時間と信頼が必要だ。これから未知の人生に立ち向かおうとするとき、友だちは最高の財産だ。
エリン・ミラー、一八歳
昨夜、何年ぶりかで彼女に会った。見るも無惨。髪は脱色して、ほんとうの色がわからない。ふるまいも荒っぽい。
心の奥の悲しみを隠そうとしているからだろう。話をしたがっていたので、一緒に散歩をした。
わたしは大学の合格通知をもらったばかりで未来のことを考えているのに、彼女は過去のことや、捨ててきた家庭のことを考えていた。
そのうち彼女は語り出した。恋人の話をした。横暴な相手なのに、言いなりになっているらしかった。ドラッグのことも話した。
逃げているのだとわたしは思った。
人生の目標についても話した。非現実的な、お金やものの夢ばかりだった。
それから、友だちが必要なんだと言った。わたしはうれしくなった。ようやく、役に立てそうだったから。
わたしたちが出会ったのは小学校二年生のときだった。彼女には歯が一本欠けていて、わたしには友だちが欠けていた。
わたしは読みたいわけじゃなかったけど、持っていたマンガを「貸してくれる?」と彼女に頼んだ。
彼女は貸したくはなかっただろうが、「うん」と言った。どっちも、微笑みを求めていたのかもしれない。
そして、わたしたちは友だちを見つけた。
夜遅くまで一緒に笑ったりおしゃべりをしたりし、あんまり寒くて休校になった日には、降りしきる雪を眺めながら出窓で一緒にホットチョコレートを飲む相手が見つかったのだ。
夏、プールサイドでわたしはハチに刺された。彼女はわたしの手を握り、「だいじょうぶ、一緒にいるから泣いてもいいよ」と言ってくれた。わたしは泣いた。
秋、わたしたちは落ち葉をかき集めて山をつくり、その上でかわりばんこに飛び跳ねた。色鮮やかな枯れ葉のベッドの上なら、墜落してもけがしたりしないから。
そしていま、彼女は墜落し、誰も手を差し伸べてはくれないらしい。わたしたちは何年も会っていなかったし、何か月も話をしていなかった。
わたしは引っ越し、彼女は家を出ていた。まったくべつの道を歩んできて、わたしたちの心は、彼女が旅してきた距離よりも、もっと遠くなっていた。
彼女の話を聞いていると、共通点は何もないように思えたが、でも彼女の目は熱っぽく訴えかけていた。
やり直す力を取り戻すために支えが必要なのだ。わたしの友情がいまほど必要なときはなかった。
わたしは彼女の手を握り、「だいじょうぶ、一緒にいるから泣いてもいいよ」と言った。
彼女は泣いた。
ダフナ・リナン
『こころのチキンスープ9』 ダイヤモンド社
(子供用に一部改変)
Ulrike MaiによるPixabayからの画像