いい話を、子どもたちに!【いい話を集めたブログ】

いい話をたくさん子どたちに聞かせたいと思い、古今東西からいっぱい集めました。寝る前にスマホで読み聞かせできます。大人の気分転換にもどうぞ。

「ジェリーの生き方」(読了時間:約6分)

f:id:kkttiiss1036:20190427005126p:plain

 

 

ジェリーは、顔を見るとつい軽口のひとつもたたきたくなる、そんな快活な男だった。いつも上機嫌で、前向きな言葉しか口にしない。

 

「どうだい、元気か?」と聞けば、決まってこう答えた。「これ以上元気があまったら、おれがもう一匹できちゃうよ」

 

彼の仕事はレストランの支配人。彼がユニークだったのは、店を変わるたびに彼についてくるウェイターが必ず何人かいたということである。

 

そんなふうに慕われたのは、彼が生来の元気印だったからだ。落ち込んでいる従業員がいると、ジェリーは決まって「渋い顔をしてると、運が逃げちゃうぜ」と言って励ました。

 

ある日、私はジェリーのところに行って聞いた。「教えてくれ。いつも前向きでいるなんて無理だろう。秘訣は何だ?」

 

ジェリーは答えた。

 

「毎朝、目をさますたびに、自分に聞くんだ。『ジェリー、きょう、おまえにはふたつの選択がある。機嫌よくしているか、不機嫌でいるか』。それに対して、おれは機嫌よくしている方をとる。

何か悪いことが起きるたび、おれは運が悪かったと思うより、いい勉強になったと思う方を選ぶ。愚痴をこぼしにくるやつがいると、その愚痴を聞き流すこともできるが、おれは人生のいい面を見るように言ってやる」

 

「でも、実際にはそう簡単にはいかないだろう?」私は反論してみた。

 

「いや、簡単さ。人生はすべて選択だよ。つまり、どんな状況も選択なんだ。まわりの人間に気分を左右されるかどうかだって、自分が選べるんだ。結論から言うと、人生をどう生きるかは選択しだいなんだ」

 

私は、ジェリーの言葉をかみしめた。まもなく私は別の業界に転職し、彼とは連絡がとだえた。しかし、仕事上で迷いが生じると、しきりに彼のことを思い出した。

 

数年後、人づてに、ジェリーが業界人としてゆゆしい失態を演じてしまったことを聞いた。店の裏口に鍵をかけ忘れたため、強盗に押し入られてしまったのだ。

 

銃で脅され、金庫を開けようとした彼は、緊張のあまり手が震えて、鍵の暗証番号を間違えてしまった。強盗はカッとなって彼を銃で撃った。

 

幸い、ジェリーは比較的早く発見され、近くの救急センターに運ばれた。そこで、十八時間にもおよぶ手術をし、何週間も集中的な治療を受けた。体内に弾丸は残ったものの、無事に退院することができた。

 

事故からおよそ半年後に、私はジェリーに会った。

 

「どうだい、具合は?」と私が聞くと、「これ以上元気があまったら、おれがもう一匹できちゃうよ。傷あと見るかい?」

 

傷あとを見るのは遠慮したが、「強盗に襲われたとき、どんなことを考えた?」と尋ねてみた。

 

「まず第一に考えたことは、裏口のドアにちゃんと鍵をかけるんだったってこと」とジェリー。

 

「それから、床に倒れたまま考えたのは、ふたつの選択があるってこと。生きることも選べるし、死ぬことも選べる。おれは生きることを選んだ」

 

「怖くなかったのか?意識はあったのかい?」

 

「救急隊員が素晴らしかったんだ。『だいじょうぶ、きっと元気になる』って、言い続けてくれたんだ。だけど、救急センターに運びこまれて、医者や看護婦の顔を見たとたん、すごく怖くなった。

みんな、『こいつはもう死んでる』って目でおれを見ているんだ。とっさに、何とかしなきゃいけないって思った」

 

「それで?」

 

「そのとき、一人の男まさりの看護婦が、大声でおれに聞いた。『あんた、アレルギーはあるの?』。おれは言った。『あるよ』。医者と看護婦は動かしていた手をとめて、おれの顔を見た。

おれは深く息を吸ってどなった。『ピストルのタマ!』。それを聞いてみんなどっと笑った。おれは言った。『おれは生きることを選んだんだ。頼みます、死体じゃなく、生きてる人間にやるように手術してください』」

 

こうして、ジェリーは生き延びることができた。ジェリーが助かったのは、医学のおかげには違いないが、彼自身の腹のすわった態度のせいでもある。

 

彼は私に、「自分の人生は自分で選ぶ」ことを教えてくれた。結局のところ、すべては態度しだいなのである。

 

フランシー・バルタザー・シュワルツコフ

「こころのチキンスープ7」 ダイヤモンド社

GraphicMama-teamによるPixabayからの画像