「時間切れ」(読了時間:約2分)
現在には、ほかのどの時代とも違う有利な点がある。それは、自分たちの時代だということだ。
チャールス・C・コルトン
相手は大手の広告代理店の社長。一方、私は駆け出しの経営コンサルタントだった。彼の部下が私の仕事ぶりを見込んで、社長との面談をとりつけてくれたのだ。
私は不安だった。この職についてまだ日の浅い私のような者が、大手企業の社長と話をするなどということは、めったにあるものではない。
約束の時間は午前10時で、面談は一時間の予定だった。私は早めに到着した。きっかり10時に、社長室に通された。ゆったりとした大きな部屋で、ソファや椅子は鮮やかな黄色だった。
社長はシャツの袖をまくりあげ、意地の悪そうな顔で私を見た。「二十分だけだぞ」社長が吠えた。
私は黙ったまま、椅子に腰かけた。
「二十分だけしかないって言ったんだよ」
またしても、無言。
「どうして黙ってるんだ?時間がなくなるじゃないか」
「この時間は、ぼくの二十分です」と私は言った。「それをどう使おうと、ぼくの勝手です」
社長はワッハッハと笑い出した。それから、二人は一時間半話をした。私はその会社の仕事をもらった。
マーティン・ラッテ
「こころのチキンスープ7」 ダイヤモンド社