「いいニュース」(読了時間:約3分)
アメリカの名ゴルファー、ロバート・デヴィンセンゾが、トーナメントに優勝したときのことだ。賞金の小切手を受け取り、居並ぶカメラににっこりほほ笑んだ彼は、クラブハウスに戻って帰り支度をした。
ひとりで駐車場を歩いていく途中、若い女が近寄ってきた。女は「優勝おめでとうございます」と言ったあと、こう訴えた。
「あたしの赤ちゃんが重い病気でいまにも死にそうなんです。でも、お金がなくて病院に連れて行くこともできません......」
デヴィンセンゾは彼女の話に心を動かされ、ペンを取り出すと、受け取ったばかりの小切手にサインした。「これで赤ちゃんを助けてやりなさい」そう言って、彼は女の手に小切手を押しこんだ。
翌週、彼がクラブハウスで昼食を食べていると、プロゴルフ連盟の役員が彼のテーブルに来て言った。「駐車場の係の話だと、あなたは先週優勝したあと、若い女に会ったそうですね」
デヴィンセンゾはうなずいた。「そうですか.........それじゃ、お知らせしますがね、そいつは詐欺ですよ。その女には病気の子なんかいないし、結婚だってしてないんですから。だまされたんですよ」
「じゃ、死にかかっている赤ん坊はいないってことかい?」とデヴィンセンゾ。
「そのとおりです」
デヴィンセンゾはそれを聞いて言った。
「そりゃ、今週聞いた中でいちばんいいニュースだ」
「ザ・ベスト・オブ・ビッツ・アンド・ピーセズ」より
「こころのチキンスープ3」ダイヤモンド社
Alejandro CuadroによるPixabayからの画像