いい話を、子どもたちに!【いい話を集めたブログ】

いい話をたくさん子どたちに聞かせたいと思い、古今東西からいっぱい集めました。寝る前にスマホで読み聞かせできます。大人の気分転換にもどうぞ。

「災いの価値」(読了時間:約2分)

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明王トーマス・エジソンの実験室は、一九一四年一二月、火事でほとんど全焼した。被害総額は二百万ドルを上回ったが、保険は二万八百ドルしかかけていなかった。

 

コンクリートの建物は火事に強いと思われていたからである。エジソンが生涯をかけて作った試作品の多くが、この大火によって失われてしまった。

 

燃えさかる火事の真っただ中で、二四歳の息子チャールズは、煙とがれきの中を、懸命に父親の姿を捜し求めた。やっと見つけた父は、目前の光景を静かに見守っていた。顔は火の照り返しで赤々と輝き、白髪が風に揺れていた。

 

「父の心中を思って胸が痛くなりました」と、後日チャールズは言った。

 

「父は六七歳、もう若くはありません......。なのに、すべてが火に呑まれてしまったんです。父は私に気づくと、大声でこう叫びました」

 

「お母さんはどこだ?」

 

「どこだかわからないんだよ」

「じゃ見つけて、連れてこい。こんなものはもう二度とお目にかかれないぞ」

 

翌朝、エジソンは焼け跡を見てこう言った。

 

「災いにはすばらしい価値があるんだ。誤りをすべて燃やしてくれたよ。ありがたいね、またゼロからスタートできるじゃないか」

 

この火事から三週間後、エジソンは最初の蓄音機を世に送り出した。

 

『種蒔く人の種』より

「こころのチキンスープ3」ダイヤモンド社

Alexas_FotosによるPixabayからの画像