「ノー・スモーキング」(読了時間:約2分)
デール・カーネギーは、よくチャールズ・シュワッブの話をしたものだ。
鉄鋼業で年収百万ドルを懐ろにするシュワッブは、自分がこれだけの報酬を手にするのは、ひとえに人扱いがうまいからだとカーネギーに述懐したという。
ある日、シュワッブが工場の見まわりをしていると、「禁煙」のサインの真下で、工員たちがタバコを吸っているのが目に入った。
サインを指さし「ばか者!あれが読めないのか!」と一喝するかと思いきや、彼はそしらぬ顔で工員たちと言葉を交わし、規則違反のことはおくびにも出さない。
別れ際にシュワッブは彼らに葉巻を与えた。そして、目をキラリと光らせて言った。
「すまないが、そいつをやるときは外でやってくれ」
ただそれだけである。非難もしなければ説教もせず、バツのわるい思いをさせることもなかった。
違反者たちが、シュワップは実はそれとなく注意を促したのだと察したことは言うまでもない。
シュワッブの人気の秘密はこんなところにありそうだ。彼が工員たちに大らかに接すればこそ、工員たちも彼に心を開くのだろう。
典拠不明
「こころのチキンスープ5」ダイヤモンド社
Joachim LaatzによるPixabayからの画像