「あなたの光を輝かせよう」(読了時間:約3分)
単純なアイデアを活かすことこそ、天才の極意である。
シャルル・ペギー
ある田舎の小さな町で、一人の男が商売をはじめ、大繁盛し、大金持ちになった。
やがて、男は病気になって入院し、余命はあとわずかと診断された。男は成人した息子三人を病院に呼びよせ、ある問題を出した。
「三人のうち一人だけに、会社を任せよう。おまえたちに一ドルずつ渡すから、そのお金で買い物をしなさい」
「ただし、夕方この病院に戻ってきたとき、おまえたちが買った品物で、この部屋を隅から隅まで満たすことが条件だ」
息子たちは、それぞれ町に出かけてその一ドルを使った。夕方病室に戻ってきた息子たちに、父親は尋ねた。
「一番目の息子よ。おまえは何を買ったのだ?」
「お父さん、ぼくは友だちの農場に行って、ふた箱分の干し草を買いました」
そう言うと、息子は部屋を出ていき、干し草の箱を持ってきてほどき、部屋じゅうにまき散らした。いっとき、部屋は干し草でいっぱいに満ちたかに見えたが、しばらくすると干し草はみんな床に落ちてしまった。
「二番目の息子よ。おまえはどうだったかね?」
「ぼくはデパートに行って羽根枕をふたつ買いました」
そう言って彼は羽根枕を持ってくると、中身の羽根を部屋じゅうにまき散らした。しばらくすると、羽根は床に落ち着いて、部屋を満たしはしなかった。
「では、三番目の息子よ。おまえは一ドルをどう使ったのだ?」
「ぼくはあの一ドルをお父さんが昔持っていたようなお店に持っていき、小銭にくずしてもらいました。それから、半分を聖書に書いてあるようないいことに使いました」
「それから40セントを町の慈善団体や教会に寄付しました。それで残りは10セントになりました。その10セントで、ぼくはふたつの物を買ったんです」
息子はポケットに手を入れると、小さなマッチと細いロウソクを取り出した。ロウソクに火をつけ、部屋の電気のスイッチを切ると、部屋は......満ちた。
干し草ではなく、羽根でもなく、部屋は隅ずみまで、この明かりで満ち満ちた。
父親は喜んだ。「よくやった、息子よ。おまえに会社を譲ろう。おまえは自分の光を輝かせる方法を知っている。それこそ人生の極意だよ」
ニド・キューベイン
「こころのチキンスープ7」ダイヤモンド社
Wolfgang EckertによるPixabayからの画像