いい話を、子どもたちに!【いい話を集めたブログ】

いい話をたくさん子どたちに聞かせたいと思い、古今東西からいっぱい集めました。寝る前にスマホで読み聞かせできます。大人の気分転換にもどうぞ。

「窓」(読了時間:約4分)

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ある大きな病院の小さな病室で、重い病気にかかった二人の男が寝ていました。

 

このちっぽけな部屋には、外の景色が見える窓がただひとつあるだけでした。

 

その窓のそばで寝ている男は、毎日一時間だけ、ベッドの上で上半身を起こすことが許されていました。

 

しかし、もう一人の壁際の男は起き上がることもできず、いつもあお向けに寝ていなければなりませんでした。

 

毎日、窓側の男は寝たきりの男のために外の様子を話して聞かせました。

 

窓からは池のある公園が見えます。子どもたちがあひるや白鳥にパンを投げ与えたり、おもちゃのボートを浮かべて遊んでいます。

 

若い恋人たちが、手をつないで樹の下を歩いています。花は咲き乱れ、青々とした芝生が広がり、ソフトボールを楽しむ人たちもいます。

 

その向こうの木々のあいだからは、ビルが建ち並ぶ街の風景も見えます。

 

寝たきりの男はこうして、ひとつひとつの話を心から楽しみました。

 

もう少しで池に落ちそうになった子どものことも、ドレスに身を包んだきれいな女の子たちのことも聞きました。

 

それを聞いているうちに、いつしか外の光景を自分の目で見ているような気分になったものでした。

 

ある日のこと、寝たきりの男の脳裏をひとつの思いがよぎりました。

 

「なぜ、あいつだけが、外の景色を見る楽しみを与えられているんだ? 俺にだって.........」

 

彼はそんなことを考える自分が恥ずかしいと思いましたが、その考えを打ち消そうとするたびに、ますます不満がつのります。

 

窓側のベッドに移るためなら、何でもしてやるぞとさえ思い始めたのです。

 

ある晩のこと、寝たきりの男がいつものようにぼんやり天井を見つめていると、隣で眠っていた男が突然目をさまし、ひどくせき込み始めました。

 

息をするのも苦しそうです。男は看護婦を呼ばうと、枕元のスイッチに必死で手を伸ばそうとします。

 

寝たきりの男は、そんな様子をただじっと見ていました。

 

朝が来ました。看護婦はその男が死んでいるのを見つけ、静かに病室から運び出しました。

 

寝たきりの男は、窓側のベッドに移してくれるよう頼みました。

 

看護婦たちは彼を隣のベッドに移し、気持ちよく眠れるようにと毛布をきちんとかけ直してくれました。

 

男は痛みをこらえながら、片ひじをついてやっとの思いで身体を起こしました。そして窓から外を見たのです。

 

そこには、何の景色もなく、ただ灰色の高い壁があるだけでした。

 

作者不明ロナルド・ダールステン&ハリエット・リンゼイ寄稿

『こころのチキンスープ2』ダイヤモンド社

(子供用に一部改変)

Zahid H JavaliによるPixabayからの画像