「ホットドッグをどうぞ」(読了時間:約3分)
ささやかな親切が、どんなに大きな幸福をもたらすかわからない。
ブリー・アベル
その日は絶好のピクニック日和だった。わたしたちは、小さな公園でホットドッグを買った。
お金を払おうとしたとき、びっくりするようなことが起こった。「ちょっと冷えちゃったからね」とホットドッグ売りは言った。
「お金はいらないよ。今日のプレゼントだ」
わたしたちはお礼を言ってベンチへ戻り、ホットドッグにかぶりついた。
気がつくと、ひとりの男性が近くに座ってこちらを見ていた。何日もシャワーを浴びていないらしい。
街でしょっちゅう見かけるホームレス状態の人だわ、とわたしは思った。それっきり、男性のことは忘れていた。
食事が終わり、肩かごにゴミを捨てに行くと、聞き慣れない声がした。
「食べ物、残ってませんか?」
わたしたちを見ていたあの男性だった。わたしはどう言っていいかわからなかった。
「いいえ、残ってません」
「そう」。彼はつぶやいた。おなかが空いているに違いない。残り物が捨てられるのを見るにしのびず、いつもそうやって尋ねているのだろう。
わたしはその男性が気の毒になったが、どうしたらいいかわからなかった。そのとき、友だちが言った。
「すぐ戻ってくるから、ちょっと待っててね」。
彼女は、さっきのホットドッグ・スタンドのほうへ走って行った。そしてホットドッグを買って戻ってくると、その男性に渡したのだ。
「さっきのプレゼントのおすそわけよ」と、友だちは言った。
親切は連鎖反応を呼び起こす。親切にされた人は、自分もまた誰かに親切にしようと思う。そのことを、あの日わたしは教えられたのだった。
アンドレア・ヘンズリー
『こころのチキンスープ9』 ダイヤモンド社
(子供用に一部改変)