「無料です」(読了時間:約3分)
うちの小さな息子が、ある晩、キッチンで夕食の支度をしている私の妻のそばに来て、何か書いたものを渡した。妻はエプロンで手をふいて、それを読んだ。
芝生を刈った..................五ドル
自分の部屋を掃除した..................一ドル
お使いに行った............五〇セント
ママが出かけたとき、弟のめんどうをみた...............二五セント
なまゴミを外に出した...............一ドル
いい点を取った...............五ドル
庭を掃除した...............ニドル
「合計一四ドル七五セントの貸し」
妻は返事を待って立っている息子の顔を見た。さまざまな思いが妻の脳裏をよぎっているようだ。ふと、黒いペン本取り、その紙の書にこう書いた。
10か月間、私の中であなたが育つのを待って運んでまわったのは......無料
いく夜も寝ずの看病をし、治るのを祈ったのは.........無料
この歳月、あなたのためにつらい思いをし、涙を流したのは......無料
すべてを足してみても、私の愛の値段は、無料です。
怖れで眠れなかった夜も、味わうとわかっていた心配ごとも無料
おもちゃも、食べ物も、着る物も、あなたの鼻をかんであげたのも......無料
それを全部足しても、本当の愛の値段は無料です。
読みおえた息子の目に、久しぶりに大粒の涙が浮かんでいた。彼はまっすぐに母親の目を見つめると言った。
「ママ、ぼく、ママが大好き」
そう言ってペンを取ると、大きな字で、彼はこう書いた。
「ぜんがく支払い済み」
M・アダムズ
「こころのチキンスープ3」ダイヤモンド社