「イエス」と言ってから考えるの(読了時間:約6分)
人生は大冒険が、さもなければ、単なる無意味なものです。
私は一人でおしゃべりをするコメディアンよ。ある日、女性記者から電話があって、私のことを記事にしたいっていうの。
記事のためのインタビューが終わると、彼女ったら「つぎはどんなことをするつもり?」って聞くのね。
私、つぎのことなんか何も考えてなかったものだから、「え、何のことかしら?」なんてとぼけてると、彼女、私がこれからどんなキャリアを積んでいくのかぜひ知りたいんですって。この私に興味があるって言ってくれてるのよ!
これは何か言わなくちゃまずいと思ったら、こんなことが口を突いて出ちゃったの。「世界一早口の女性がギネスブックに打ち立てた記録を破ってみたい!」って。
つぎの日、さっそく新聞に私のインタビュー記事が載って、例のギネスブック云々のことまで書いてあるじゃない。
すると、夕方の五時に、テレビ番組から電話がかかってきて、ショーに出演して世界一早口の女性の記録破りに挑戦してみないかっていうの。
八時には迎えの車を寄越すから、その晩のショーでやってみろってわけ! これは全国で放映される番組で、チャンスはたったの一回限り、これを逃したら二度とこんな話はないからってしんぼう強く説得するんですもの......。
私は電話機を見つめたまま考えたわ。その晩は七時に別のショーに出演する予定が入っていたの。だけど、自分がホントはどっちに出たいか見きわめるのに時間はかからなかったわ。
そうなったら、あとは別のショーのピンチ・ヒッターを探すだけ。知り合いのコメディアンに片っ端から電話したわ。ありがたいことに、約束の時間五分前になって、やっと代わりが見つかったの。
それから、さっきの番組に電話して、出演しますって伝えたわ。
そこで私は腰を下ろし、自分がこれからいったい何をしようとしているのか心を落ち着かせて考えた。その結果、ギネスブックに電話して、早口の世界記録を破るにはどうすればいいか聞いたの。
シェークスピアか聖書のどこか一か所を朗読するんですって。
そのとき、聖書の一節が口に上ってきたの。ママが自分を守るためのお祈りよって教えてくれたやつ。シェークスピアってのは、どうも馴染みがなくてね。
だから私は聖書に唯一の望みをかけて、何べんも何べんも練習したわ。ものすごくドキドキするんだけど、同時にとってもワクワクしちゃって......。
八時に、高級車が迎えに来ました。私は車の中でも練習し続けて、ニューヨークのスタジオに着くころには、ろれつが回らなくなっちゃったくらい。私は係の女性に聞いたわ。
「もし、私が記録を破れなかったらどうなるの?」
そしたら、「そんなこと、番組にとってはどっちでもいいの。彼はとにかく、あなたにショーで挑戦させてみたいだけ」ですって。
そこで、私は自分自身に聞いたわ。最悪の事態が起こるとしたら、どんなこと?馬鹿まる出しで全国に放映されること?そんなの、どうってことないわ。私はそんなの気にしないで生きていけると思う。それじゃ、もし記録を破れたら?
そう考えたら、あとはベストを尽くすだけと決心したわ。そして、私はやったの。
私はテレビを通して、全国の観衆の前で、一分間に585語をしゃべり、世界一早口の女性になったの!もっとも、その記録は、二年後に一分間に603語しゃべって、私自身が更新したのだけど。
以来、私の仕事はトントン拍子にうまくいったわ。人からは、どうしてそんなことができたのってよく聞かれるの。いつだって、私が何かをやり遂げたときは、こんなふうに聞かれたものだわ。
それに対して、私はいつもこう答えるのよ。
「私の人生哲学はシンプルそのものよ。つまり、まず『イエス』と言っちゃうの。それから、自分にこう聞くのよ。『成功するためには、何をすればいい?』って。それから『失敗したらどうなる?』って。でも答えは、ただ、成功しないってだけのこと!そして、もしうまくいけば、私は成功するのよ!」
まずは、自分らしく生きること。そして、そのときそのときを楽しむこと。人生は、これがすべてよ!
(一部要約)
フラン・カーポ
「こころのチキンスープ6」ダイヤモンド社