ちょっといい話~大人用~「があっても天災と思う」(読了時間:約4分)
医学博士、鴨下一郎氏の心に響く言葉より…
事故によって電車のダイヤが乱れたときなど、案内の駅員をつかまえて、
「どうなっているんだ」と腹を立てている人を見かけることがあります。
案内の駅員に腹を立てれば、電車が早く走り出すのであればいいですが、
怒ろうが、騒ごうが、電車は走るときにならなければ走りません。
「どうしようもないこと」に腹を立てても血圧が上がるだけです。
その影響を受けて動脈硬化が促進され、心臓への負担も増すでしょう。
健康に悪い作用しかないのに、なぜ、どうしようもないことに腹を立てるのか。
落語に『天災』という話があります。
長屋住まいの八五郎は、とにかく短気で、怒りっぽい。
そんな八五郎に、ご隠居さんが「何があっても天災と思え。
天とケンカはできぬのだから」と教えます。
道を歩いているときに、商家の丁稚(でっち)に撒き水をひっかけられた。
丁稚にひっかけられたと思うから、腹が立つ。
天災、つまり「どうしようもないこと」と思えば、腹も立たない。
仕方ないと、あきらめられる。
屋根から落ちてきた瓦が、頭にぶつかった。
その家の住人の責任だと思うから、腹が立つ。
瓦は天から落ちて来た。
これも天災、いわば「どうしようもないこと」と思えば、腹も立たない。
仕方ないと、あきらめられる。
…というわけですが、腹が立つことがあったら、このご隠居さん教えに
従ってみるのも、ひとつの方法だろうと思います。
ご隠居さんの教えにしたがえば、電車がこないのも、天災。
職場の上司が、ものわかりの悪いガンコ者であったとしても、腹を立ててはいけない。
怒ったところで、上司がものわかりのいい上司になってはくれないのですから、これも天災。
昼メシに入った食堂の定食がマズかった。
これも天災。
これは「どうしようもないことなんだ」と思って上手にあきらめれば、
腹立たしくなることもないでしょう。
ここで私がいいたいことは、「どうしようもない」とあきらめると、
「ならば、こうしよう」という、いいアイデアが思いつくことがある、ということです。
電車がストップしている。
しょうがない…
「そうだ、この空き時間を使って、カバンの中の書類に目を通していこう」
「携帯電話で、あの人への連絡をすませておこう」
「最近、寝不足だったのだ。ちょうどいい。コーヒーショップで昼寝していこう」
といった具合に、です。
こう考えれば、腹は立たず、むしろ気持ちが明るくなるのではないでしょうか。
天災だから、どうしようもないとあきらめるのも、「腹立ち」「怒り」という
感情から遠ざかって、状況を客観的に判断する手段のように思います。
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『「機嫌のいい人」に人は集まる』新講社ワイド新書
池田龍三氏「ちょっといい話」より