「クッキーどろぼう」(読了時間:約3分)
女性がひとり、夜の空港で待っていた。
飛行機の時間まで、クッキーをひと袋買って、腰をおろした。
本を読んで待っていた。ふと気づけば、横にいた男性が、なんと二人の間に置いた袋から、クッキーをつまんでいる。
女性は騒ぎを起こすのがいやだったから、知らんぷりを決めこんだ。
しかし、あきれたクッキーどろぼうは、クッキーをどんどん食い荒らしてくれる。刻々と時間がたつにつれ、女性のいらいらはつのるばかり、
「あたしがこんないい人でなきゃ、ぶんなぐってやるわ!」
女性がクッキーを一つ取れば、男性もまた一つ取る。最後の一つが残ったけど、この男性はいったいどうする気だろ?
男性はわざとらしく笑うと、最後のクッキーを手に取り、二つに割った。
その一つを女性に差し出し、残りを男性は食べた。
女性は男性からクッキーのかけらをひったくると、内心思った、
「ああ、なんてやつ。この厚かましさ、この恥知らず、ひと言の礼も言わないなんて!」
こんなに腹が立ったのは生まれて初めてだわ。
飛行機の時間が来ると、ほっとして、「恩知らずのどろぼう」には目もくれずに立ち去った。
女性は飛行機に乗り、本をさがした。「あともう少しで読み終わるわ」。
しかし、荷物の中を手を入れた女性は、驚いて息をのんだ。なんと自分が買ったクッキーがある。
「私のクッキーがここにあるなら……」
「あれはあの人のだった、それを私に分けてくれた!」
あやまろうにも手遅れだった。
自分こそ恥知らずの、恩知らずの、どろぼうだった!
ヴァレリー・コックス
『こころのチキンスープ3』(ダイヤモンド社)より
(子供用に一部改変)